小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

誰もが批評家、コメンテーター気取りの現代

 

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(『脱批判のススメ』 <第1章 「批判のあふれている社会」> より抜粋)

何でも上から目線でコメント、評論する私たち

 現代に生きる私たちは、誰もが批評家、コメンテーター気取りなところがあります。

 自分が目にした何かに対する感想や批評をそばにいる人に毎日のように話したり、またコメントをネット上に書きこんだりしています。

 テレビで政治のニュースを見れば、「あの政党はダメだ」「◯◯っていうのは本当にどうしようもない国だ」などと言い、テレビドラマを見ては「最近のドラマ は全然面白くない」「また最低視聴率更新」と何だか得意げに言ったり。

お笑い芸人を見ては「あの芸人は一発屋」「あんなのすぐ消えるよね」などと口 にする。スポーツを見ては「あの監督はダメ」「世界で勝つにはもっとこうしないと」とダメ出し。

小説、漫画を読んだり映画を見ては批評し、飲食店へ行った後はその店の味やサービスについてコメントとともに採点する。

 こういった光景を、みなさんもどこかで目にしたことがあるかと思います。

またはみなさん自身がそのような言動をしたことがあると思い当たる方も少なくないのではないでしょうか。

 このように、気がつけば私たちは無意識のうちにありとあらゆることを批評しているのです。

特にインターネットが社会に浸透し、SNS(ソーシャル・ネット ワーキング・サービス)を人々が利用するようになってからは、自分が批評をしたり、または他の誰かが批評しているのを目にする機会が爆発的に増加しました。

 でも、ちょっと待ってください。冷静に考えてみると少し変だと思いませんか。だって、こんなに何でもかんでも批評しているなんて、何だか上から目線で偉そうです。

少し大げさに言うなら、まるでみんな自分が神様であるかのようにあらゆる物事を上から眺めている感じです。

 しかし、私たちは本当に偉いのでしょうか。

  

褒めるよりマイナスの評価やコメントをする傾向

 店を評価採点するネット上のサイトではマイナスの評価が目立ちます。

例えば5段階評価で5が最高点の場合、平均が4点以上の商品やサービスというのはなかなかありません。3・5あればかなりの高評価と言ってもよく、2や1を付ける人は割と多くいます。全体的に辛口な傾向が見られます。

 実はこの「評価が辛口」という傾向は、このような評価サイトにかぎらず様々な場所で見受けられます。

例えば何かのテーマについての会議、小説作品を批評する発表会、企業の試作品の製品を評価するアルバイトなど、多くの人が集まって何かの批評や評価をする場がありますが、そういった場所ではなぜかみんな批判ばかりで、「あれはだめ」「ここがよくない」というマイナスのコメント大会になってしまうのです。

良い部分を評価するプラスのコメントの方が少ないということになりがちです。

 そもそも、批判と批評は本来は別のものです。

批判が「人の言動の誤りや欠点を正すべきであると指摘すること」であるのに対して、批評は「できるだけ客観的に近い形で、ものごとの良い部分と悪い部分の価値判断を下すこと」です。

ですから本来批評というものは、対象となるものの良い部分と悪い部分の両方を取り上 げなければならないのです。

 しかし、多くの場合実際に行われているのは「批評」ではなく、悪い部分だけを取り上げる「批判」であって、時にそれは「中傷」に近いものになることがあります。

 

 

 

脱批判のススメ

脱批判のススメ

  • 作者: 佐藤密
  • 出版者: 小金井書房
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