小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

『古畑任三郎 vs SMAP』の面白さ

 

SMAPによる犯罪

TVドラマ『古畑任三郎』シリーズはどれも面白くて好きなのですが、中でも好きなエピソードの一つがこの『古畑任三郎 vs SMAP』です。

アイドルのコンサート会場の舞台裏という、普段私たち一般人が見ることがない場所が舞台という所も好きですし、何より魅力的なのがやはり犯人がSMAPであるという面白さです。

フィクションとはいえ、あのSMAPが人を殺すわけですから、それだけでももう充分に面白いのです。

 もちろん殺害に当たってはそれなりの動機が用意されていますし、「世の中に正しい殺人なんてないってことくらい俺らだってわかってるよ」(木村)というように、ドラマの中の彼らも自分たちの行いが正しいなどとは思っていません。

特にリーダーである中居氏は殺害実行の直前まで葛藤し、他のメンバーの反対を押し切って最後の最後まで、草なぎ氏をゆする富樫に対して話し合いで問題を解決しようと試みています。

このお話では、古畑が登場するまでの序盤でドラマのサントラの『動機』という曲がとても効果的に使われています。通常のエピソードでは、ドラマの終盤で犯人の動機が明らかになる時に使われる哀愁のある雰囲気の曲ですが、このドラマでは富樫の殺害までの序盤で繰り返し使われているのがとても印象的でした。

この曲が、仲間のためにSMAPが罪を犯してしまうというこの哀愁のあるエピソードにとても合っていると感じます。

それにしても被害者の富樫を演じた宇梶剛士氏は演技がすごく上手いですね。殺し甲斐のある実に嫌な男を演じていました。笑

 

 友情の物語

私がこの作品が特に好きな理由は、ミステリーやトリックの部分ももちろん面白いのですが、何よりSMAPの5人の強い友情に胸を打たれるからです。

はたしてここまで大人の友情を描いたものがそうそうあるだろうかと思うほど、作品中の5人は固い絆で結ばれています。

国民的なアイドルであり地位のあるSMAPが、大事な仲間のために全てを失う覚悟で犯行に及ぶ。この絆については古畑も作中で、「実に友達想いの皆さんだ」「え~あなた方の友情には感服します」と言及しています。

 作中の設定では、SMAPの5人はキンダーハイム(孤児院)出身ということもあって絆が強いようですが、現実のSMAPもこのドラマと同じように友情がありそうな所がまたいいです。

ところで少し話が逸れますが、『ショーシャンクの空に』という有名な映画がありますよね。あの映画も私はこのドラマと同じ理由で好きなのです。あの作品も色々な見所がありますが、中でも私はアンディとレッドの友情に一番ぐっと来るのです。

なぜそこまで友情にぐっと来るのかと考えてみますと、そこに打算や欲といったものを感じないからです。

恋愛や結婚というテーマは多くの人が関心がありますが、翻って現実の世界を見渡してみると、恋人や結婚相手といった関係には「世間体」「金」「相手の容姿に対する執着」といった不純物がつきまといがちなものです。

ですから、そういったものが一切ない友情という人間の感情はとても貴重ですし、尊いと感じるのでしょう。それがたとえフィクションの中で描かれているものであったとしても。

 

SMAPのメンバー個々の魅力

このドラマは長さが2時間弱ですが、その中で5人それぞれの人間性と魅力がとてもよく描かれているなあと感じます。例えば以下のような具合です。

「草彅剛」
  • 人が良くてみんなから好かれている。今回の犯罪計画も、草なぎ氏が富樫にゆすられていてそれを救うために他の四人が結束した。
  • 当初の計画では、動機があり疑われやすい草なぎ氏は犯行に参加しない予定だったが、仲間に実行を任せるのが申し訳なく、予定外に犯行に参加してしまう。
  • 作中では、「ごめん。僕のせいだ」と何度も他のメンバーに謝る。
「中居正広」
  • 責任感が強く、この犯行計画がもしも失敗した時のメンバーの今後の人生についてかなり心配している。
  • (これからこの作品を観る方のために詳しくは書きませんが)他にもメンバーのためを思うある行動に出ている。
「香取慎吾」
  • 楽観的な性格で、あまり細かいことにはこだわらない。
  • 全体を通して草なぎ氏に対して異常なほどの優しさを見せている。思いつめた様子の草彅氏に対して、「あんまり深く考えない方がいいよ」と両肩に手を置く場面も。
  • 予定と違う突発的な草なぎ氏の犯行計画への参加に対しても、「剛君の気持ちも考えてやろうよ!」と仲間を強く説得している。
「稲垣吾郎」 
  • 「弁護士呼んだ方がいいんじゃない?」と発言するなど常に現実的でクールだが、人生を棒に振るリスクがあるこの犯行に参加している。つまり彼も他のメンバーと同じように仲間に対して強い友情がある。
  • ダンスの振付を覚えるのが自分だけ他のメンバーより遅い。
  • 犯行の際には弁当の入った箱をエレベーターに戻して一人で時間稼ぎをするなど、目立たないところでしっかり仕事をしている。
「木村拓哉」
  • 草なぎ氏を守るため、今回の犯行計画を立てる。
  • 今回の犯行は単に友情のためだけではなく、「挑戦」であると古畑に発言する。
  • 古畑に対し挑戦的な物言いをしたり、作中でメンバーの中に裏切者がいるとして稲垣氏を強く疑う。

 

木村氏が吾郎氏を本気で疑うシーンはえぐいけどかなり面白いですね。笑 吾郎氏もかなり困惑していました。

また、個人的には木村氏のような強気の性格の人物が草なぎ氏のような気弱で大人しそうな人物に強い友情を持っているということが興味深いと感じます。

 

名言? 面白いセリフの数々

最後にこのドラマで面白いと思ったセリフをいくつか。SMAPの前で古畑が妙に刑事ぶって、刑事のことを「デカ」と言ったり普段と様子が違うのが面白いです。

 

  • 古畑「ピカさん」  今泉「(・・?)」  古畑「ピカさん君しかいないでしょ」  木村「(やっぱり本物の刑事って)あだ名とかで呼ぶんですね」
  • (ジムでトレーニングしながら)香取「古畑さんもどうすか?」  古畑「いや、私は・・(笑)」  香取「気持ちいいすよ、これ」  古畑「気持ちいいこと嫌いなんです私」
  • 今泉「ねえ、香取君は一番年が若いんだよね? みんなとうまくいってる?」
  • 古畑「・・ぉぃコラァッ!! 勝手に位置とか動かすんじゃねえよこの馬鹿野郎が。現状ってのはなぁ、俺たちデカにとっちゃなぁ、聖域も同じなんだよ。えサンクチュアリイだ。それ忘れんな、このバカタレが」
  • 木村「あ、坂本龍馬っているじゃないですか」  古畑「ええいましたね」  木村「彼って、別に日本の将来のこと考えて頑張ったんじゃないと思うんですよね」  古畑「は?」
  • 香取「あんたのカッコつけた顔はもううんざりなんだよ!」  木村「今何つったオイ」  香取「あんたばっかりオイシイとこ持ってっちゃってさあ! オレと剛君はいつでもお笑い担当だよ!」  木村「お前は喜んでやってんじゃねーのかこの野郎」  香取「・・心では泣いてたんだよ!」
  • 稲垣「言ったろ? 僕だってSMAPの一員だ」
  • 古畑「(窓は)小さいよ」  西園寺「小さいですか」  古畑「君ならわかるけど、香取君はほら(大きいから)」  西園寺「自分中心に考えてました」 古畑「気をつけて」  西園寺「すみません」