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小金井書房ブログ

平安、孤独、楽しさ、をテーマに

クリスマスの憂鬱

短編小説

 

 

仕事が終わり、いつもの帰りの電車に乗り込んだ。

混雑している車内で仁美は考えていた。

 

憂鬱な日だ、今年も・・

なんでキリストの誕生を祝う日が恋人や家族と過ごすことになっているんだろう

 

クリスマスは嫌いだ

普段は意識しないのに、この日は自分が孤独であることを強制的に認識させられるから

 

クリスマスの楽しい思い出なんてひとつもない

でもこの時期世間は容赦なくクリスマスを意識させてくる

 

今この電車に乗っている人の中で、クリスマスを全く意識していない人っているんだろうか

一人ぐらいはいるかな

私もその精神が欲しい

 

 

なんで私は一人なんだろう

努力が足りないのだろうか

ただ運が悪いのか

 

でも私、頑張ってるよな

だって、毎日こんなに辛い思いをしているのに耐えているんだ

それで精一杯

 

私もいつか一人じゃない時が来るんだろうか

それともずっとこのまま一人で孤独に、家賃と生活費のために働き続けるのだろうか

あと何十年も・・・

 

 

電車が地元の駅に到着する。

エスカレーターを使わず隣の階段を降りる。

改札口の所で待ち合わせをしている男女が目に入った。

その横を足早に通り過ぎる。

駅を出ると冷たい風が顔に吹いてきた。

 

 

世の中は理不尽だ

同じ女なのに、夫がいて、子供がいて、この憂鬱な労働から解放されてる人がいる

そのことを思うといつも頭がおかしくなりそうになるので考えないようにしている

 

でも不公平で理不尽なのが世の中というものでしょ?

そうやっていつも自分に言い聞かせている

 

それに、世の中にはクリスマスがどうしたとか言ってる場合じゃない、私よりもっと大変な人たちだっていくらでもいる

 

それはわかっている

だけど・・・

 

 

アパートに着いた。

誰もいないいつもの真っ暗な部屋の電気をつける。

 

簡単な夕飯を食べ、洗濯など帰宅後のいつもの作業を済ませて風呂に入る。

湯船に浸かっている間が仁美が一日で一番好きな時間。

熱く温かい湯を全身で感じているうちに、全身がぼーっとしてゆく。

それとともに嫌な考えごともいつの間にかぼやけていく。

 

風呂から出て髪を乾かすと、仁美は『深夜食堂』をDVDプレーヤーにセットした。

 

新宿の片隅にある、深夜に営業する「めしや」が舞台のTVドラマ。

寡黙だけど温かみのあるマスターと、世間の幸福とは無縁そうな常連客たち。

小さくて味わいのある店の雰囲気。

 

これを観ている間は、仁美はつかの間現実を忘れて自分がこの店にいるような気分になる。

この世界に自分のような人間でも受け入れてくれる場所がある気がしてほっとする。

 

 

冷え切っていた心が少し温まって、仁美は布団に入って眠った。

 

 

 

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