小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

名将ファーガソン監督を唸らせたダニー・ウェルベックの一言

 

鬼監督も一目置いたウェルベック選手の言葉

 ダニー・ウェルベックという、イングランド代表のサッカー選手がいます。

2016年現在はイギリスのアーセナルというチームに所属していますが、以前はマンチェスター・ユナイテッドに所属しており、日本の香川慎司選手の同僚でもありました。

 マンチェスター・ユナイテッドと言えばその代表的存在は、27年にも渡ってチームを率いて2013年に勇退した名将、アレックス・ファーガソン監督です。

先日、そのファーガソン監督の自伝を読んでいたら、監督現役時代のこんなエピソードがちらりと書かれていました。

 

ある日、ファーガソン監督が、いつも生意気この上ないウェルベック選手にこんなことを言ったそうです。

「いつかお前を殺してやるぞ」

するとウェルベックはこう答えました。

「悪くない死に方ですね」

 この切り返しに、ファーガソン監督も思わず唸ったそうです。

 

 ファーガソン監督と言えば、選手の管理や規律にはとても厳しく、顔を赤くして激怒する姿から、「ヘアドライヤー」という異名を持つ人物。

香川選手も、「あんなに怒る人だとは思わなかった」と言及するほど激しい性格の監督ですが、そんな監督も思わず舌を巻いた、ハリウッド映画の登場人物並みのウェルベックのユーモアのセンス。

 たしかに、もしファーガソン監督に殺されるなんていうことがあるとしたら、それはある意味とても名誉なことです。

あの世界的名監督ファーガソンに殺された人、また、その名将に殺人を犯させるほど本気で怒らせた人として、歴史に残るでしょう。

 このユーモアの秀逸な点は、ウェルベックがファーガソン監督の偉大さをリスペクトしている気持ちが込められていることです。

「あなたほどの人に殺されて死ぬならば、それはむしろ名誉なことですよ」と。

 ですから、ファーガソン監督も怒る気にはならず、むしろ「一本取られた」と、このエピソードを嬉しそうに語っている印象でした。

 冗談とはいえ「殺してやるぞ」と言ってきた恐ろしくて偉大なボスを一瞬で手玉に取り、「こいつ、やるな」と思わせたウェルベック選手の切れのある一言。

見事ですね。

 

笑いやユーモアの精神は人を喜ばせ、幸福にも関わる

 私がこのエピソードを読んで思ったのは、ユーモアってかなり大事だな、ということです。

実際、ファーガソン監督もこの自伝の中でウェルベック選手について記述しているページはほんのわずかだったのですが、その中で彼のことを「いつも鮮やかな切り返しをする男」として賞賛とともに書き記しています。

 こうしたユーモアの精神というのは、なくても生きていけるものだとは思いますが、あると嬉しいもの、人を喜ばせることができる貴重なものなのではないでしょうか。私自身も、このエピソードがいいと感じたから、こうして記事に書いているわけですし。

 ユーモアや笑いといったものは、一見すると私たちに直接的な利益をもたらすものではないようにも見えますが、人が生活をしていく上で幸福感に関わる、かなり価値の高いものなのではないかという気がします。

 ユーモアにしても笑いにしても、自分に余裕がないとなかなか持てないものではありますが、しかしそういう大変な時こそ必要ですし、持っていたいと思うものでもあります。

 ウェルベック選手自身も、その後、選手としての順風満帆なキャリアを送っているわけではありません。

しかし、たまたま読んだ本の中に見つけたウェルベック選手の一言から、私は相当貴重なことを気づかせてもらったという思いがしています。

 

 

 

アレックス・ファーガソン自伝

アレックス・ファーガソン自伝