小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

メイ首相のダンスと、ユンケル欧州委員長の絶妙なユーモア

 

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 まずは、下のこのニュースをご覧ください。

2018年10月3日、イギリスのメイ首相が、与党保守党の党大会を締めくくる演説に、ABBAの曲「ダンシング・クイーン」に合わせて踊りながら登壇したという記事です。

記事内では、メイ首相が踊りながら登壇するそのシーンの動画を見ることができます。

 

 

少し恥ずかしそうに踊るメイ首相が印象的です。

 メイ首相といえば、「氷の女王」や「メイボット」(メイ+ロボット)というニックネームをつけられるなど、強面で冷たい印象を持たれていますが、本人はそのことをあまり良く思っていないようです。

そのようなイメージを払拭したいのか、テレビ番組に出演した際に、そのようなあだ名に対して反論したり、8月にアフリカを訪問した際には、ダンスを披露したりもしています。

ところが、その時のダンスがまるでロボットのようだと揶揄され、それを受けて(リベンジとして?)この10月3日の党大会で「ダンシング・クイーン」に合わせて踊りながら登壇した、ということだそうです。

 

 そんなメイ首相のダンス。

これだけでも十分面白いのですが、続いて、こちらのニュース。

 

 

 10月8日、 欧州連合(EU)欧州委員会のユンケル委員長が、ブリュッセルで行われた会合で演説するために登壇した際、会場の音楽がすぐに止まらず、その音楽に合わせて即興で短いダンスを披露しました。

それが、3日のメイ首相のダンスを真似たジョークであるとして、会場の笑いを誘いました(かなり受けています)。

実際に動画を見ると、会場に流れたその音楽というのはしっとりした曲調のもので、ダンスをするようなものではなく、体の動かし方から見ても、ほぼ明らかにメイ首相を意識したジョークであることが見て取れます。

 記事では、この冗談がメイ首相を揶揄しているとして、メイ首相やその支持者らからは顰蹙(ひんしゅく)を買ったとされています。

 

 しかし、私はこのユンケル委員長のユーモアは素晴らしいものだと感じました。

ユンケル氏がマイクに向かった際に音楽が止まらなかったのはちょっとしたトラブルだったわけですが、そこで咄嗟の機転で、最高の笑いを作り出して見せる。

それも、今から欧州委員会委員長として責任ある演説を行おうとしている、そんな局面で。

この一件がどれほど世に知られているのかは知りませんが、たまたまニュースで知ったユンケル委員長のこのささやかな行動は、とても印象に残るものでした。

 私は、ユーモアや笑いというものを、この世で最も重要なものの一つとして捉えています。

それは、笑いというものが、主義主張や立場を超えてどんな人をも楽しませ、緊張や苦しみを和らげてくれ、幸福な気分にさせてくれる、社会の平和に寄与するものだと考えているからです。

その観点から見れば、「ダンシング・クイーン」に合わせて登壇したメイ首相にも拍手を送りたい思いです。