(『刺激から離れる生活』 <第1章 刺激を求める本能>より抜粋)
より強い刺激を求めたがる、人間の本能的習性
詳細についてはこの本の中で見ていきますが、社会で起きているあらゆる現象を観察してみると、どうやら私たち人間には刺激を求めて行動するという、本能に近い性質があるということがうかがえます。
しかも、人はただ刺激を求めているだけではなくて、より強い刺激の方へ向かっていくという傾向があるのです。
弱い刺激よりも強い刺激の方が人気があるということです。
例えば私たちは部屋に一人でいる時、何もしないでいるのは刺激がなくてつまらないですから、テレビを見たり音楽を聴いたりして刺激を得ようとします。
また、容姿が普通の人よりも美女(美男)の方が視覚的に気持ちよくて興奮しますから、人は美女(美男)を求めたがります。
これらは、刺激がない(または弱い)状態から刺激が強い状態へと向かう行為です。
このようにして、私たちはいつも無意識では刺激を求めていて、「もっと刺激が欲しい、もっと楽しくなりたい、もっと気持ちよくなりたい、もっと興奮したい」と、今現在の状況よりももっと強い刺激が得られて興奮できる何かを求めて行動しているのです。
負の感情、ネガティブな感情も無意識に求めてしまう
人は強い感情に囚われている時、ドーパミンやノルアドレナリンという脳内物質が分泌されます。
ドーパミンとは人が快感を得ている時に主に分泌される物質で、ノルアドレナリンは恐怖や不安、ストレスなどネガティブな感情を抱いている時に主に分泌される物質です。
快感とネガティブな感情。
両者は一見真逆の性質のものですが、実は我々人はそのどちらも好きで求めてしまうという風変わりな性質を持っています。
快感は気持ちいいものだから求めるのはわかりますが、ネガティブな感情を求めていると言われると不思議に思う方もいるかもしれません。ネガティブな感情というのは、一般的には不愉快なものですから。
人が気持ちのいいものと不愉快なもの、正反対の二つのものを求めてしまう理由、それは快感もネガティブな感情もどちらも刺激的だからです。
私たちは恐怖や怒りなどのネガティブな感情すらも、刺激がなくてつまらない普通の状態よりは興奮できて気持ちがいいと認識してしまう場合があるのです。
それは、多くの人がホラー映画を見たり遊園地の絶叫マシンに乗ったりするのを楽しんでいることを考えれば、理解していただけるのではないかと思います。
「怖い、怖い」と言いながらも、人は誰かに強制されるわけでもないのに自分から進んで恐怖という刺激を求めて、その恐怖を楽しさやある種の快感として受け止めているのです。
このようにして私たちは、まるで刺激を求める本能とでもいうべきものに従って、快感でもネガティブな感情でも何でもいいからとにかく刺激を求めてしまうという、困ったような性質を持っているのです。