近頃、雨がおそろしいほど長く降り続いている。朝起きて窓を開けると、まるで当然のようにいつも雨が降っている。ここ数年そんな天気がかなり増えた。
いったいなんということだ。
こんなに雨が降り続いたことが過去にあっただろうか。さらに、夏などは信じられないほど暑い日も出現するようになった。
異常だ。
これぞまさに異常気象なのだ。
ここ1、2年は体感としては一年365日の内、300日が雨で60日が酷暑、残りの5日が普通の日という感じだ(大げさだけど印象としてはそんな感じだ)。
こんなに雨の日が多くて喜ぶ人はいない。いるとすれば河童か、相当な雨フェチか、前世が河童の人か、このいずれかだ。
雨の日は空が暗い。電気をつけないと日中でも室内は暗くなる。毎日がそんな様子だと、自然と気分も上がらなくなる。世の人たちは、この雨の日々をどう思って過ごしているのだろうか。
たとえばアウトドア好きの人たちなどはどうしているのだろう。週末の山登りや屋外のイベントなどを生き甲斐にしている人などは、相当なレベルのストレスを抱えているのではないかと想像する。
特にアウトドア好きというわけではない私も、さすがにこれだけ雨が続くとまいってくる。なかでも、湿度の高さと洗濯物が乾かないことはけっこうなストレスだ。これだけ長く不快で暗い日々が続くと、気持ちも塞いできて、鬱になったり自殺する人も増加するのではないか。
しかし現実に雨が降り続く以上、いくら不満をこぼしても仕方がない。変えられない現実は受け入れるしかないのだ。
さて、どうにかしてこの憂鬱な雨の日々をやり過ごす方法はないものだろうか。
雨。雨。雨……
そうだ。
『ブレードランナー』だ。
うろ覚えだが、映画『ブレードランナー』では、ごちゃごちゃと人や建物が密集した暗い都市にすごく雨が降っていたという記憶がある。それがなんともミステリアスで魅惑的だったのだ。
そこでさっそく私は雨の降る日、ためしにここが『ブレードランナー』の世界だと思い込んでみることにした。
すると、どうだろう。
急に雰囲気が出てきた。ただの暗くて灰色の目の前の景色が、まるで別のものに見えてきたのだ。
なんということだ。いま私は、ハードボイルド且つ幻想的な近未来SF映画の世界の住人となった。『ブレードランナー』の世界だと思えばすべてが変わる。「ラーメン」とか「カラオケ館」とかどうでもいいような日本語の看板も、あの映画の中では謎めいた東洋を感じさせる魅惑の美術装置となる。
そうだ。ここは一つ、うどんを食べよう。
映画の中でマイケル・ダグラスが食べていたからだ。より雰囲気が出ること間違いなしだ。
いや待て。マイケル・ダグラスって『ブレードランナー』に出てたっけ? 『ブレードランナー』といえばハリソン・フォードだろう?
そうだ。マイケル・ダグラスが出てたのは『ブラック・レイン』だ。あんまり似てるから間違えたじゃないか。くそっ。なんで『ブレードランナー』と『ブラック・レイン』はあんなに似ているんだ。
同じ監督だからだ。
そんなことはどうだっていい。それより、雨の降り続く日にはうどんだ。
なぜなら『ブレードランナー』といえば、あのごちゃごちゃした都市の屋台で食べるうどんだからだ。