小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

言葉の持つ印象について考える

 

言葉というものは、その一つ一つにイメージや印象のようなものがあるように思う。

同じ一つの言葉でも人によって印象が全く違う場合もあるだろうけれど、たとえば「失業」「借金」「税金」のように、その言葉を見たり聞いたりすると多くの人の気分が下降するものがある。

「多重債務」とか「住民税」という言葉を聞いただけでわくわくして夜も眠れなくなる、という人は多分あまりいない(借金の回収や税金を徴収する側の人にはいるかもしれない)。

逆に、「ボーナス」「三連休」「食べ放題」のように、それを目にするだけで多くの人の気分が上昇する言葉もある。

また「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険」のように、「長過ぎる」「無理がある」と感じる言葉もある。

 

そうして言葉の印象というものを考えてみると、「カメラ」という言葉が、近頃どうも味気ないものになってしまっていると私は感じることがある。

おそらく、カメラというものが初めてこの世に登場したばかりの頃は、もっと楽しくてわくわくするイメージの言葉だったのではないかと想像するのだが、最近は「防犯カメラ」だとか「胃カメラ」のように、役には立つけれど、特に楽しくはないものに使われる機会も多くなった。

外出先で「防犯カメラが作動しています」という文字などを見かけると、非常にげんなりした気持ちになる。

そこで考えたのだが、「カメラ」を「キャメラ」と呼ぶことにしてみたらどうだろう。

なんだか昔の映画監督が使う言葉みたいで、面白くないだろうか。

たとえば、

 

「胃キャメラ」

「防犯キャメラ」

 

どうだろう。

殺伐としていたものに、急に味や愛嬌のようなものが感じられてこないだろうか。

他にも、

 

「ビッグキャメラ」

「デジキャメ」

「キャメラマン」

「キャメ梨和也」

 

…最後のはカメラじゃないか。

 

カメラの他にも、「コン」という言葉で省略されるものも、どうも面白味がないと思っている。

 

「パソコン」「エアコン」「生コン」「合コン」

 

なんというか、機械的で無機質な感じだったり、欲望を感じさせたり、あまりいいイメージがない(「生コン」ではなく「生ビール」だと大分違う)。

それにしても、パソコンはパーソナルコンピューター。生コンは生コンクリート。合コンは合同コンパの略だけれど、エアコンはいったい何の略だったか。

エアコンピューター?

普段当たり前のように使っている言葉だけれど、何の略なのか思い出せない。

そこで気になって調べてみたら、エアコンの正式名称は「エア・コンディショナー」だった。

…何だ、それは。

ずいぶん素敵な名前じゃないか。シャンプーとコンディショナー、みたいな。

かなり意表を突かれた。

エアコンとエア・コンディショナーでは、言葉から受ける印象が違い過ぎる。

不倫とプリンくらい違う。

絶対にエア・コンディショナーのほうがいい。私はこれからその正式名称を積極的に使っていくと決めた。

暑い夏は熱中症にならないように水分をこまめに摂って、エア・コンディショナーを適切に使っていこう。

エア・コンディショナーのリモコンがよくどこかに消えてしまうが、これからは失くさないように気をつけよう。

 

そういえば最近、近所の家のエア・コンディショナーの室外機から「カタカタカタ…」と変な音がしている。室内にいても聞こえてくるほど大きな音だ。

それがエアコンの室外機だったら「うるさい」と感じるところだが、エア・コンディショナーの室外機だと思うと「うん。まあ、しかたないか」「そういうことも、あるよね」くらいの気持ちにもなるから不思議だ。

 

やはり、言葉の持つイメージというものは侮れない。