(『刺激から離れる生活』 <第3章 刺激から離れる大きなメリット> より抜粋)
過剰な欲望と願望が苦しみの原因となる
不満というのは、人が何かを望んでいるけれどそれが叶っていない時に生まれるものです。
望みがあるのに叶っていないわけですから、それは人にとっては不愉快な状態です。
何かがどうしても欲しいと思っているけれどそれが手に入っていない状態というのは、とても苦しいものなのです。
ただ、それは逆に考えてみれば、何かを強く望まなければ不満が生まれることもないということです。
人が「もっとああなりたい」とか、「もっとあれが欲しい」と望むのは欲望という刺激的な感情によるものですが、刺激の支配を離れることができるようになると、欲望という刺激に駆られて過剰に何かを望むことがなくなりますので、不満を抱いて苦しむ機会を大幅に減らすことができるようになります。
このように「何かを望まないほうがいい」などと言われると、何だか夢がないですし、あまり楽しくなさそうだと思う方もいるかもしれません。
ところが、この「何かを強く望まない」という姿勢が、かえって自分を快適で幸福にしてくれるという側面があるのです。
例えば、人は未来に対して何かを強く望んでばかりいると、今目の前にある現状に感謝して満足するということができなくなってしまうものです。
そういった精神状態のままでいると、「自分はもっとああなりたい」とか「もっとあれがほしい」と際限なく求めては、死ぬまで欲望の苦しみを味わう生活を送ることになるでしょう。
もちろんそういう生活スタイルを送りたいという人がいるならばそれはまったくその人の自由だと思いますが、その生活スタイルにはこの本で述べているように刺激が持つ苦しみや様々なデメリットもついてくることは覚悟しなくてはなりません。
でも、そういう過剰な欲望や願望から離れてみると、何かが死ぬほど欲しいと苦しくなったり、それが手に入らずにイライラすることもなくなって、心はおだやかになってリラックスできます。
そして、今の自分に無いものばかりを外部に求めようとするのではなく、今自分の目の前に存在しているものに対して感謝の気持ちをもって接することができるようになります。
私たちの心から欲望や何かを望む気持ちを完全に無くすというのは現実的ではないにしても、意識してそれらを少しずつ減らしていくだけでも、不満による苦しみは減って、私たちは本質的な快適さを得ることができるようになるのです。