小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

健康に対する過度な執着とストレスは健康に良くない

 

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(『刺激から離れる生活』 第7章「その他の刺激」より抜粋)

 

健康、病気に関するテレビ番組や情報が不安を煽る

 ここ数年、テレビで健康に関する番組が多くなっていると感じます。平均寿命が昔に比べて長くなり、社会に高齢者が増えているので健康に不安を抱えている人が多く、需要があるのだと思います。

ですから今、「健康」というのは誰もが無関心ではいられず、不安を掻き立てられる刺激的なテーマと言えるかもしれません。

テレビの健康番組を見ていると、「自分もこの病気かもしれない」、または「この病気になるかもしれない」と視聴者はとても不安になります。今は健康な人でも、そういう情報を見ると何だか心配になってしまうでしょう。

 たしかに健康に関心を持つことは大切ですが、必要以上に健康を心配してしまうとかえって健康を害することになるかもしれないということを私は危惧しています。

なぜかと言うと、そうやって強い不安にいつも駆り立てられていたら、今度は心の不健康の方が問題になってくるからです。

今は健康なのに、この先の自分の健康を不安に思うあまりにうつ病になる人が出たとしてもまったくおかしくありません。うつ病まで至らなくても、元気な生活が目的で健康に関心をもっていたのに、健康への不安で気分が塞いでしまい、活き活きとした生活が送れなくなってしまうのでは本末転倒ではないでしょうか。

「病は気から」という言葉があるように、今は健康体であるのに過剰な情報に翻弄されて不安やストレスを高めてしまうと、そのせいで本当に健康でなくなってしまうこともあり得ます。

 

何のための健康なのか

 それに、未来の健康に気を取られて、その心配ばかりに毎日時間を消費していたら、何のために自分が生きている「この今」という時間があるのかもわからなくなってしまいます。

 病気や不健康というのは、どんなに普段から気を付けていても、なる時にはなるものです。にもかかわらず、普段から病気や不健康を過剰なまでに恐れて避けようとしていると、実際に自分が不健康な状況になった時の衝撃は大きく、立ち直れなくなってしまいます。

ですから、自分の望まない状態を恐れて避けるだけではなくて、どうしようもないものを受け入れるという姿勢も必要ではないでしょうか。

 それからもう一つ重要なことは、人は身体が健康であれば幸せになれるとはかぎらないということです。

これはお金にも言えることですが、健康もお金も目的のための手段や道具に過ぎないものだからです。

たしかに体が健康でいられるということは幸運なことであり、それ自体が大変ありがたいことではありますが、その道具を使って何をするかということを忘れてはならないと思います。

 

死を受け入れることで、苦しみが軽減する

 そもそも、どうして我々がこんなに健康について不安になってしまうのかというと、意識しているにせよ無意識にせよ、やはり根底には「死が怖い」「死にたくない」という感情があるからではないかと思われます。

病気になるのが怖いのも、それが最終的には死につながる可能性があるからでしょう。

 ただ、当たり前な話ではありますが、人はいずれ死ぬものです。

健康は大切ですが、どんなに健康に気をつけていたところで、やがては誰もが必ず死ぬというのが厳然たる事実です。

現在あらゆる所で見られる健康への意識の高まりは、その絶対誰にもおとずれる死という現実から目を反らそうとしているようにも見えます。

ただ、私たちは絶対に死ぬというのが現実であるのに、それをあまりにも避けようとするというのもいかがなものでしょうか。別に寿命で死ぬことに限らず、私たちはいつだって、若い時にだって何かの事情で死んでしまう可能性はあるのです。

 

 そこで、今の私たちに必要なのは、健康になろうと努力するだけではなくて、死を受け入れるという姿勢ではないでしょうか。

いつかは自分も必ず死ぬことを受け入れる。どんなに努力していても、健康でなくなることもあることを受け入れる。

簡単ではないかもしれませんが、その方が結局は心の健康にとっては良いのではないかと思います。

 昆虫や他の動物たちと同じように、生物ならば誰にでも平等に訪れる死というものに対して、「嫌だ、絶対死にたくない!」と泣き喚いたり必死に抵抗する姿というのは、幸福な精神状態とは言えません。

いつか自分が死ぬことも不健康になることも、忌み嫌うのではなく「受け入れる」という姿勢が必要であり、そしてそのことがかえって私たちを楽にしてくれるのではないでしょうか。

 

 

 

刺激から離れる生活: 苦しみを減らす。心を安定させる

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  • 出版者/メーカー: 小金井書房
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