小金井書房ブログ

孤独、哀愁、静けさ

『刺激から離れる生活 -苦しみを減らす。心を安定させる-』(「はじめに」より)

 

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(佐藤密『刺激から離れる生活』【Kindle本】 「はじめに」より抜粋)

不安定な私たち現代人の精神

 現代の社会では、私たちの身の回りにはいつもあらゆる刺激があふれていて、心の落ち着きやおだやかさというものが貴重なものとなっています。

テレビをつければ事件や事故などの痛ましいニュースが毎日流れ、感情の起伏の激しいテレビドラマやテンションの高いバラエティ番組が私たちの五感を強く刺激します。

手にしている携帯端末や音楽プレーヤーからは視覚的、聴覚的情報が洪水のようになだれ込んできます。

そして感情面では、私たちはいつもイライラしていたり不安を感じたていたり、他人と自分を比べては落ち込んだり喜んだりしています。

まったく安定性がなく感情はいつも波立っていて、おだやかに安らいでいられる時間がほとんどありません。

 

 ところで、その感情面の問題やストレスは、上記のテレビやモノ、または他人など、自分の外部から影響を受けて生まれているように思われるかもしれませんが、実はその多くは私たちが自分自身で作り出しているものなのです。

 例えばよく考えてみると、テレビや携帯端末を見るのも、考えごとをして不安になるのも、我々は誰かに強制されてやっているわけではありません。自分で勝手に行っているのです。
そして、嫌ならいつでもやめる自由が本当はあるのです。

つまり、我々が心の平穏と安定を失っている原因、その多くは実は私たち自身にあるのです。

 そして、私たちは日常的に刺激的なモノや感情に慣れ過ぎて、ざわついた心の状態でいることが当たり前になってしまっているためになかなか自覚できませんが、そのように強い刺激にいつも依存している生活は、アルコール依存症の患者と同じようなもので危険な状態と言えます。

なぜなら、それは人の精神を不安定で脆いものにさせる上、もはや刺激がないとやっていけないという刺激中毒の症状を起こすようになるからです。

現に今、スマートフォンの依存症になり、それが無くなったら困るという人は世界中に多いのではないでしょうか。

 このように、刺激に依存する生活をこれからも続けていると、私たちは一生精神の安定やおだやかな幸せを得ることができなくなってしまいます。

 

我々を操る黒幕

 今、街や電車の中ではほとんどの人が携帯電話の画面を見つめています。

インターネット上には他人を攻撃する批判や悪口の言葉が溢れ、職場では必ずと言っていいほど人間関係の問題が起き、学校からはいじめがなくなりません。

世界レベルで見ても、あちこちで考え方や信条の異なる人同士が争い殺し合い、敵対する国家と国家は永久に解決が不可能と思えるほどいがみ合っています。

 このような状況を目にする時、ふと頭をよぎることがあります。

それは、「私たち人間というのはもしかして昆虫やロボットと同じなのではないか」ということです。

なぜなら、これらの行動はどれもまるで何かにプログラミングされているかのように画一的、ステレオタイプで、個々の人間の自由な意思が感じられないからです。

あたかも働きバチが自分の意志とは無関係にその本能の命令によって巣を作るように、我々人間も本能的な何かによってそう行動するように操られているかのようにも見えるのです。

 たしかに人間もしょせんは動物の一種に過ぎませんから、昆虫などの生物と同じと言えば同じです。

今挙げたような一連の行動が人間の本能だというのなら、私たちもただ本能に従って争ったり行動しているだけなのでしょう。

 しかし、人間が他の多くの生物やロボットと違うのは、高度な知能を持っていて、本能に従って動くだけではなく、もっと自由に行動できるという点にあるのではないでしょうか。

本当は私たちはいつも携帯電話の画面を見ていなくてもいいのですし、気に入らない相手がいるからといっても必ず相手を批判したり攻撃しなければならないということはありません。ただ相手から遠ざかるという方法もあります。

そういった考えや行動の選択肢の自由が本来私たち人間にはあるはずなのです。

 

 偉そうなことを書いて申し訳ありません。

 人間は他の生物と違い、もっと自由に考えたり行動できる潜在能力を持っているはずなのに、大勢の人が自分の自由な意思を持たないかのように同じような行動をしたり、また攻撃的になったりしてしまうのはいったいなぜなのか。

 実は、そのような私たち人間の行動を背後から操っている要因が存在します。

 それが、「刺激」です。

「私たちは、無意識のうちに刺激を求めて行動していて、刺激によって思考と行動を支配されている」というのが本書のテーマであり、偉大な先人たちの教えや現実世界の研究を通して私が学んだことです。

そして重要なことは、詳細についてはこの本の中で見ていきますが、刺激というものはどうやら私たちを不幸にしてしまうものであるということです。

 

 仏教の創始者であるブッダは、「苦しみの原因に気づいてその苦しさを減らし、心のやすらぎに至ることこそが最高の幸福である」と説いています。

 では私たちを不幸にしている刺激とはいったいどのようなものなのでしょうか。

本書ではその様々な刺激について考察し、我々の無意識を支配して苦しめている刺激から離れて、本当の自由と安定したおだやかな心を手に入れるための方法について見ていきたいと思います。

 

 

 

刺激から離れる生活: 苦しみを減らす。心を安定させる

刺激から離れる生活: 苦しみを減らす。心を安定させる

  • 作者: 佐藤密
  • 出版者: 小金井書房
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: Kindle版